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対人援助研究会(4) :「働く人の支援に携わって:個を支えることと組織を支えること」
2013.10.25臨床心理センターニュース
今年度の北翔大学臨床心理センター主催「対人援助研究会」は,「乳幼児から高齢者までのライフサイクルにおける課題と支援を考える」をテーマに行われています。
 
10月回の概要を下記にてレポートいたします。ご一読いただければ幸いです。
 
本会はテーマに関心がある方はどなたでもご参加いただけます。ご参加お待ち申し上げております。次回以降の概要については,下記サイトを参照下さい。
http://www2.hokusho-u.ac.jp/sisetu/rinsyo_f/news/2013040101
*詳細のお問い合わせは、臨床心理センターまで

【平成25年度対人援助研究会第4回】
テーマ:「働く人の支援に携わって:個を支えることと組織を支えること」
日時:10月8日(火)18:45~20:45
話題提供者:小坂守孝 教授 (専門:コミュニティ心理学,職場のメンタルヘルス)
コメンテーター:村瀬嘉代子 教授(北翔大学大学院/日本臨床心理士会会長)
場所: 北翔大学732教室(江別市文京台23番地)
 


【院生レポート】
第4回目となる今回は,本学人間福祉学部の小坂守孝教授より「働く人の支援に携わって:個を支えることと組織を支えること」と題して話題提供がなされた。産業領域における働く人への個人カウンセリングや組織と対象とした種々のメンタルヘルス対策(講習会を含む),健康管理,職場復帰支援(リワーク),復職審査などについて,現状を共有し,求められる支援について考える場となった。
当初,小坂教授の主な職歴が紹介され,7年半に及ぶ大手企業内健康管理部門の心理職としての勤務経験や企業内精神科における復帰支援プログラムの担当経験などから話題提供がなされた。企業におけるメンタルヘルスの活動の現状では,メンタルヘルスケアに取組んでいない職場が50%に及び,取組まない理由の51%が「必要性を感じない」という働く人にとっては厳しい内容に驚いた。
取組施策としては,第1次予防から第3次予防について紹介された。特に第3次予防の中で,うつに関する相談事例では右肩上がりには簡単に回復しないことや, 復職審査,職場復帰の段階・支援では従業員側と事業者側との異なる利害があり,休暇や休業等の労務に関する一般的な法律や当該企業の就業規則を熟知したうえで,心理職として対応する必要があること等が大変参考になった。
一方で,小坂教授の問題意識として、種々の施策の案はあっても実際のメンタルヘルス対策の実施率は低いこと,知識もあまり浸透してはいないこと,「他人事」のように捉えられる風潮があることなど,そうした現状の中で対応を模索しているという旨が語られた。
参加者との議論の中では,現実的で活発な意見交換がなされた。職場復帰に関してはプログラムを個人の状態に応じ柔軟に変化させ適用する必要があること,うつが発見された際には当事者のプライドを傷つけることへの躊躇を持ちながらも,速やかな上司への伝達,早期対応が奏功することがあることなどが話し合われた。
コメンテーターである村瀬嘉代子教授からは,日本の産業構造の変化により,それまでひとり一人が積み上げてきた技術や努力・資質・経験がはじき出され,個人の力だけでは如何ともし難い状況となっていることがまず指摘された。EAP等の種々な施策は大切だが、本人が現実を受けとめてリワークできることや本当にその人のためになる個別に応用された方法が適用されることが重要ではないか、また、ゆとりや豊かさのある日本の精神文化への回帰、明確な解決策がない難しさを臨床に携わる人がきちんと発言し、もう一度何を大事に生きていくかという生き方の提示をすることが、産業の中での臨床の課題ではないかとのコメントがなされた。
今回の研究会では、労働現場において、企業の心理職として良心を持ち、個を支え、そして組織をも支えることのジレンマや難しさを痛感した。また、心理アセスメントだけではなく、メンタルヘルス教育の実施,休職制度等労働関連法規の熟知などの実務能力や実行力・調整能力をもつことも大変重要だと感じた。
(人間福祉学研究科臨床心理学専攻 修士2年 市川 薫)
 
 
今年度の北翔大学臨床心理センター主催「対人援助研究会」は,
「乳幼児から高齢者までのライフサイクルにおける課題と支援を考える」をテーマに行われています。
 
10月回の概要を下記にてレポートいたします。ご一読いただければ幸いです。
 
本会はテーマに関心がある方はどなたでもご参加いただけます。ご参加お待ち申し上げております。次回以降の概要については,下記サイトを参照下さい。
http://www2.hokusho-u.ac.jp/sisetu/rinsyo_f/news/2013040101
*詳細のお問い合わせは、臨床心理センターまで


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【平成25年度対人援助研究会第4回】
テーマ:「働く人の支援に携わって:個を支えることと組織を支えること」
日時:10月8日(火)18:45~20:45
話題提供者:小坂守孝 教授 (専門:コミュニティ心理学,職場のメンタルヘルス)
コメンテーター:村瀬嘉代子 教授(北翔大学大学院/日本臨床心理士会会長)
場所: 北翔大学732教室(江別市文京台23番地)
 
【院生レポート】
第4回目となる今回は,本学人間福祉学部の小坂守孝教授より「働く人の支援に携わって:個を支えることと組織を支えること」と題して話題提供がなされた。産業領域における働く人への個人カウンセリングや組織と対象とした種々のメンタルヘルス対策(講習会を含む),健康管理,職場復帰支援(リワーク),復職審査などについて,現状を共有し,求められる支援について考える場となった。
当初,小坂教授の主な職歴が紹介され,7年半に及ぶ大手企業内健康管理部門の心理職としての勤務経験や企業内精神科における復帰支援プログラムの担当経験などから話題提供がなされた。企業におけるメンタルヘルスの活動の現状では,メンタルヘルスケアに取組んでいない職場が50%に及び,取組まない理由の51%が「必要性を感じない」という働く人にとっては厳しい内容に驚いた。
取組施策としては,第1次予防から第3次予防について紹介された。特に第3次予防の中で,うつに関する相談事例では右肩上がりには簡単に回復しないことや, 復職審査,職場復帰の段階・支援では従業員側と事業者側との異なる利害があり,休暇や休業等の労務に関する一般的な法律や当該企業の就業規則を熟知したうえで,心理職として対応する必要があること等が大変参考になった。
一方で,小坂教授の問題意識として、種々の施策の案はあっても実際のメンタルヘルス対策の実施率は低いこと,知識もあまり浸透してはいないこと,「他人事」のように捉えられる風潮があることなど,そうした現状の中で対応を模索しているという旨が語られた。
参加者との議論の中では,現実的で活発な意見交換がなされた。職場復帰に関してはプログラムを個人の状態に応じ柔軟に変化させ適用する必要があること,うつが発見された際には当事者のプライドを傷つけることへの躊躇を持ちながらも,速やかな上司への伝達,早期対応が奏功することがあることなどが話し合われた。
コメンテーターである村瀬嘉代子教授からは,日本の産業構造の変化により,それまでひとり一人が積み上げてきた技術や努力・資質・経験がはじき出され,個人の力だけでは如何ともし難い状況となっていることがまず指摘された。EAP等の種々な施策は大切だが、本人が現実を受けとめてリワークできることや本当にその人のためになる個別に応用された方法が適用されることが重要ではないか、また、ゆとりや豊かさのある日本の精神文化への回帰、明確な解決策がない難しさを臨床に携わる人がきちんと発言し、もう一度何を大事に生きていくかという生き方の提示をすることが、産業の中での臨床の課題ではないかとのコメントがなされた。
今回の研究会では、労働現場において、企業の心理職として良心を持ち、個を支え、そして組織をも支えることのジレンマや難しさを痛感した。また、心理アセスメントだけではなく、メンタルヘルス教育の実施,休職制度等労働関連法規の熟知などの実務能力や実行力・調整能力をもつことも大変重要だと感じた。
(人間福祉学研究科臨床心理学専攻 修士2年 市川 薫)