11月29日(土曜日)芸術学科特別講義として、札幌円山キャンパスにてISSEY MIYAKEのデザイナー宮前義之氏をお迎えして、「一枚の布の可能性」というテーマで講義をしていただきました。
宮前さんはISSEY MIYAKEに入社し、A-POC(A Piece of Cloth)の企画チームに参加されたあと、2011年より4代目のイッセイ・ミヤケのデザイナーとしてパリコレクションを舞台に活躍され、現在はA-POC ABLE ISSEY MIYAKEのデザインチームを率いて、様々なアーティストやプロダクトデザイナーと協業しながら、新たなファッションの可能性を探求されております。そのような活動をされている宮前さんが,どうしてファッションを目指したのか、そして今どういうことを考えているのか、本学の学生、これからファッションの世界を志す学生や高校生、アートやファッションに関心のある一般の参加者に向けてお話して頂きました。
講義では、最初にファッションを志したきっかけから学生時代、そして三宅一生さんとの出会いなど宮前さんがどの様にしてデザイナーになったのかをお話しいただきました。高校生の頃からダンスや演劇に興味を持たれ、様々な公演に足を運びそれが出会いに繋がり、偶然が必然になって行くかの様にファッションとISSEY MIYAKEと言う点に結ばれていく様は、様々な糸が撚り合わさりテキスタイルになるかの様でした。また、情熱をもって失敗を恐れず行動していく姿はデザイナーや表現者を目指す学生にとってとても良い刺激になりました。
次にファッションという仕事についてお話していただき、ファッションの世界や仕事がどの様なものか参加者にも分かりやすく伝わる内容でした。ファッションという仕事が様々な人がチームとして協力し合い成り立っているという事、チームを作り動かす事も一つのデザインであり、宮前さんがスタッフ全員に向けて作られた映像では、チームとして一体感を持ち互いを理解し合い関わる人々が「一枚の布」になるかのようでした。
最後に現在のクリエーションについてお話しいただきました。指揮者の井上道義氏との協業による「TYPE-Ⅰ MM project」など、着心地という演奏家と身体への問いから、リサーチや問題定義をしながら発想と試作を繰り返しデザインしていくA-POC ABLEのデザイン思考のプロセス、また、米の籾殻から作られた素材を結び付けるなど、新たなものを生み出すために、複数の視点をもって発想しどの様にしてクリエーションを生み出していくか、作品の制作過程を通してデザインへの情熱と共に語られる言葉の一つ一つがデザイナーという生き方までも参加者に伝わる内容でした。
また、講義のテーマである「一枚の布の可能性」、イッセイ・ミヤケのクリエーションにおいて、身体と「一枚の布」という関係から無限の可能性を捉えるISSEY MIYAKEのフィロソフィーが、布-テキスタイルにおいても、身体と「一枚の布」という関係の様に、その素材が身体となりテキスタイルとして無限の可能性を開いてゆく関係として捉えられ、テキスタイルから衣服まで「一枚の布」というフィロソフィーで貫かれていることが改めて理解出来る内容でした。