北翔大学には、北海道の大学で唯一となる25mバリアフリー室内温水プールと、水深5mのダイビングピットがあります。
本学では、中学校・高等学校教諭一種免許状(保健体育)や健康運動指導士受験資格の取得を目指す学生にとって、水泳の授業は必修科目です。そのため、多くの学生がこの施設を活用しています。
北海道は「小学校以来、水泳の授業を受けていない」という学生も少なくありません。一方で、令和6年の北海道の水難者総数は全国第6位と報告されており、海や河川に囲まれた北海道では溺水・溺死事故が多く発生しています。こうした背景から、水中での安全管理を学ぶことは、将来教員や指導者を目指す学生にとって極めて重要です。
現在、本学では卒業研究の一環として、大学生・大学院生を対象に着衣泳の実験を実施しています。着衣泳と水着泳における泳タイム、主観的運動強度、疲労感などを比較し、データを収集しています。
結果の詳細は卒業研究発表会で公表予定ですが、すでに次のような傾向が明らかになっています。水の抵抗は泳速度の3乗に比例するため、着衣泳では抵抗が大幅に増加し、疲労度も高まります。実際、50mを泳げる学生でも着衣では13mで立ち上がってしまうケースや、泳タイムが水着時の2倍以上遅くなる例も見られました。このことから、着衣で泳ぐことがいかに体力を消耗するかが明確になりました。
実験を通して、万が一自然環境で溺水した場合には、無理に泳がず呼吸を確保し、浮き身の姿勢で助けを待つことが何より重要であることを改めて確認しました。
教授・花井 篤子(専門:水泳・水中運動処方)
.png)
写真:着衣泳の実験風景と自己保全のための浮き身の姿勢