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スクワット動作における骨盤後傾の隠れた原因
2025.12.10スポーツ教育学科
 スクワットは下半身の筋力を鍛える代表的なトレーニングですが、動作中に「骨盤後傾」が起こると、効果が低下するだけでなく、腰痛や怪我につながる可能性があります。アスレティックトレーナーの専門科目では、このような問題に着目し、原因解明の評価と改善方法のコンディショニングについて学びます。そこで、本記事では、スクワット動作における骨盤後傾の原因と対策について紹介します。
 
◾️見落とされがちな原因:腸腰筋
 骨盤後傾の原因はいくつかありますが、中でも腸腰筋の筋力低下は見過ごされやすい重要な要因です。腸腰筋は大腿部と腰部をつなぐ筋群で、骨盤を前傾させる働きを持っています。この筋肉が弱いと、スクワット中に骨盤の適切な位置を保てなくなり、後傾が起こりやすくなります。
 
◾️骨盤後傾を引き起こす4つの要因
1. 腸腰筋の筋力低下・機能不全:股関節屈曲を助ける腸腰筋が弱くなったり、適切に働かなかったりすると、骨盤を前傾状態に保つことが困難になります。
2. 後部筋群の過剰な緊張:ハムストリングスや大殿筋といった太ももの裏側やお尻の筋肉が過度に緊張すると、骨盤が後方へ引っ張られてしまいます。
3. 足関節の可動域制限:足関節を十分に曲げられない(背屈制限)と、スクワットの動作全体が制限され、骨盤に無理な力がかかります。
4. 体幹コントロールの不足:体幹と股関節の連動がうまくいかないと、上半身の前傾を適切にコントロールできず、骨盤後傾を招きます。
 
◾️骨盤後傾が引き起こす問題
 骨盤が後傾すると腰椎が屈曲し、椎間板に過度な圧力がかかります。これが腰痛の原因となり、特に腸腰筋の機能が低下している場合に症状が顕著に現れることが分かっています。
 
◾️改善アプローチ
1. 腸腰筋の強化トレーニング:膝を胸に引き寄せる運動やレッグレイズなどで腸腰筋を鍛えます。研究により、股関節屈曲角度が30〜60度の範囲で腸腰筋の活動が特に高まることが明らかになっています。この角度では他の筋肉の貢献度が低下するため、腸腰筋をより効果的にトレーニングできます。
2. 体幹筋の協調性向上:腸腰筋に加えて、腹横筋や多裂筋といった体幹深部の筋肉を協調的に働かせるトレーニングを行うことで、慢性腰痛の軽減効果が期待できます。
3. フォーム指導の工夫:単に「骨盤をニュートラルに保つ」だけでなく、「腸腰筋を事前に収縮させる(アクティブプレテンション)」意識を持つことが、より効果的なスクワット動作につながります。
 
 スクワット動作における骨盤後傾は、複数の要因が関係する複雑な問題ですが、科学的なアプローチによって改善が可能です。アスレティックトレーナーの養成では、このような身体動作のメカニズムを解明し、スポーツパフォーマンスの向上と怪我の予防に関する学びに取り組みます。筋力バランスを整え、正しい動作を身につけることで、より安全で効果的なトレーニングが実現できます。皆さんも一緒に、身体の仕組みを科学的に探究してみませんか?
 
教授・吉田 真 (専門:アスレティックトレーニング学)