-シェルボーン・ムーブメント(SDM)国際視察研修報告 -
スポーツ教育において「動くこと」は、技術の習得や体力向上だけを意味するものではありません。人は動きを通して、自分の身体を知り、他者と関わり、環境との関係を築いていきます。本学スポーツ教育学科に所属する筆者は、こうした身体の根源的な働きに着目し、主に教育や支援の場に生かす研究と実践を行っています。
その一環として、2025年2月、ヨーロッパにおけるシェルボーン・ムーブメント(Sherborne Developmental Movement:SDM)の実践を学ぶため、ベルギーでの海外視察研修を行いました。SDMは、英国の体育教師・理学療法士である
Veronica Sherborne によって考案された身体活動のアプローチです。特別な器具を用いず、床での遊びや相互的な動きを通して、自己認識や他者との関係性を育てることを特徴としています。
視察では、乳幼児と保護者を対象とした親子セッションから、小学生集団による活動まで、発達段階の異なる複数のSDM実践を観察しました。いずれの場面でも共通して見られたのは、活動が「導入―展開―収束」という明確な流れをもって構成されている点です。はじめに大人が関わることで安心できる場がつくられ、次に子ども自身の動きが大きく広がり、最後には再び落ち着いた状態へと戻っていきます。この流れの中で、子どもたちは自ら動きを生み出し、他者と関わりながら身体を調整していました。
また、年齢に応じて大人の関わり方が変化する点も印象的でした。乳幼児期には親の身体的な支えが中心となり、成長に伴って指導者は最小限の合図や関与にとどまります。これは、子どもの主体性を尊重しながら、動きの探索を支える教育的配慮であるといえます。
今回の視察を通して、SDMは「正しい動きを教える方法」ではなく、「動きを通して人が育つ場を整える実践」であることを改めて実感しました。スポーツ教育学科における学びにおいても、競技以前の身体感覚や関係性の形成を重視する視点は、今後ますます重要になると考えられます。今後とも、こうした国際的な実践から得た知見を、教育・研究・学生指導へと継続的に生かしていきます。
教授・瀧澤聡(専門:特別支援教育、シェルボーン・ムーブメント)
図1.幼児とその親によるSDMの活動

図2. 小学校でのSDMの活動

図3.SDM研修会の様子